WXBC in 北海道で講演させていただきました
会場内で蜃気楼についてパネル展示させていただきました。 |
ツイッター等ではお知らせしていましたが、先月札幌市で行われた、 WXBCセミナーin 北海道で、蜃気楼について少々公演させていただきました。
WXBCとは、気象庁さんが事務局を務める気象ビジネスコンソーシアムという産学官連携団体の略称です。
私も所属している、(一社)日本気象予報士会(以下、予報士会) 北海道支部が北海道での「WXBCセミナー」への協力を続けており、今回、当支部に声がかかった次第です。
WXBC事務局(札幌管区気象台)の皆さん、北海道支部中心メンバーの皆さんが密な関係を築いてこられた成果で、今回のコラボが実現しました。
この場をお借りして改めて御礼申し上げます。
「気象ツーリズム」は北海道からはじまる!
講演の前半、予報士会パートのタイトルは「ガイドは気象予報士!ほっかいどう気象ツーリズム」です。前半は、我らが副支部長兼美術部長(勝手に命名)野村予報士の講演で幕を開けました。
野村予報士は自然現象や天体撮影がご趣味で、写真もプロ級。
特に今回は、冬の北海道で見られる気象現象を訪ねて周遊するような、疑似ツアーをスライドで紹介しました。
ちなみに、この「気象ツーリズム」という言葉、まだ国内で”明意に”使っている方はおられないようでした。
今回の内容にふさわしいタイトルはないか、事務局の方とアイデアを出し合って考えたタイトルです。
例えば天文の分野では「宙ツーリズム」という言葉があるようなので、気象についても新しいカテゴリーとして提案したいという気持ちもありました。
さていよいよ私の出番。
いつもの蜃気楼の話ですが、札幌で一般の方向けの講演をしたい、という密かな野望があったので、念願がかなった形です。(呼ばれたら何回でもやりますけど!)
今回は、「なかなか観光素材として火がつかない北海道の蜃気楼を例に、自然現象を観光素材化する場合の課題と対策」について自分なりの考えを披露しました。
スライドの一枚 |
JTBさんの提案
気象関連以外では、JTBさんが未来的な旅行の形の提案ということで、「観光予報プラットフォーム」について紹介されました。旅行業だけでなく飲食店などでも、混雑具合について、ビックデータをもとに予測することができるそうです。
さらに、有名な「竹田城の雲海」の例では、発生しやすい気象条件と混雑予想をもとにおすすめの観光予定日も教えてくれるそうです。
これは個人的にも色々検証してみたいなぁ!という面白いシステムでした。
なかなか、触れる機会のない話題だったので、非常に勉強&刺激になりました。
ビッグデータを現実に落とし込むには
ちょっと話がそれますが・・・最近、いろいろな勉強会とかで、最先端のデータサイエンスとか5G的・大容量通信系の話が出てくることが多いです。特にビッグデータ系は、あまりに現実(特に、私が住んでるような、北海道の都会部ではない、過疎地域の現実)と乖離していると感じるというか・・・。
たとえばマップが出てきても、明らかに「過疎地には”点”がない話題」だったり(涙)
北海道でも中央部はついていけるけど他は無理だよね…とか、そういう感覚を覚えるのですね。
この感覚は、都会にお住まいの方には、非常に説明しづらいところです・・・。
(もちろん、光ファイバーもあるので、同等の情報は手に入るのですが、ほかの部分があまりに均質でないというか)
「デジタルネイティブ」の方が増えたせいか、「システム構成図」(あえて言おう!一部業界の方が”ぽんち絵”とか”とんち絵”とかいうヤツです)を書ける人は増えましたよね。
…でも、これって本当に現実に落とし込めるの?という不安をいつも感じます。
まるで物語の中のようなお話、に聞こえてしまうのですね。
例えば、今回の「観光予報」だと、コアな予想データの部分は、各飲食店さんとかではもちろん使えるんでしょうね。
そこから先、実際のツアー事業とかへの展開って現場を考えたときに、やっぱりお金がかかる受け入れるリソースがないお客がいない北海道はアクセスしづらい、さらに道東は時間がかかるのでツアーに組み込めない、ヒグマがいるから人を呼べない、畑に人が入るから呼びたくない(極端な例です)。etc etc...とかなって、硬直してしまう。
ひとつひとつ、実際の人と人とのつながり、で乗り越えられるような仕組みや枠組み、覚悟。が必要なんだろうと思います。
★決して、今回の「観光予報プラットフォーム」に難癖をつけているわけではなく、北海道(やそれに類する過疎地域)の観光、とか、他分野についてもビッグデータの活用という現実を考えたときに。
はい、話がだいぶそれてすみません。
予報士と名乗れる幸せ
さて、念願かなって札幌での講演もできたことだし、実はもう、それほどやりたいことって残っていない!といえばそれまでなのですが。時折、お伝えしてきた通り、私が「気象予報士です」と名乗って「何かをやらせてもらう」っていう状況は、ほんとうに稀有で、ラッキーなことなのです。
実は気象予報士有資格者というのは、世の中に1万人いて…と、この話をするとまた長くなるので簡単にしますが。
実際の気象予報業務、気象キャスター以外の立場の人のほうが圧倒的に多いのです。
「それ以外…の人」が「気象予報士です」と名乗って、「何かをする」ようになった流れが出てきたのって、実はこの10年くらいのことで。
私が資格を取得した約20年前には、考えられないことでした。
それが、たとえば武田康男先生のような「写真家+予報士」という枠組みで活躍される方が出てきたり。
仕事にしないまでも、予報士会の「サニーエンジェルス」のように、主婦でいながら資格を生かした社会貢献活動をする、という動きが出てきたのが、この10年くらいなのです。
このような方々の活躍がなければ、私も斜里で「気象予報士です」と名乗ってお天気講座をしたり、蜃気楼の普及活動を行ったりすることは、決してなかったでしょう。
(気象予報士の本来業務である、「現象の予想」については「気象業務法」で厳密に決められており、予報士資格があるだけでは行えないのです。一方、気象キャスターなどを行う場合に予報士を名乗ることを制限されているわけではありません。とはいえ、予報士、と大手を振って名乗ることは、何となくはばかられるような雰囲気が長く続いていました。)
斜里を離れて道央部に引っ越してきたので、現在は予報士会北海道支部の活動に参加できる機会も多くなってきました。
6年前に北海道支部を立ち上げ、支部活動を中心になって支えてきたメンバーの皆さん、連携してくださっている気象庁をはじめとする各機関の皆さんのおかげで、気象予報士としての「勉強の場」が北海道でも維持されています。
十数年前までは望むべくもない状況だったので、感謝の一言しかありません。
ただ、多くの予報士の皆さんと交流する機会が増えて、改めて感じたのは「予報士と名乗って(何か小さいことであっても)世の中に出ていく」ことのハードルの高さ、高い壁、は依然として存在するのだな、という実感でした。
さらに「予報士」と名乗り続けていく・・・となれば、かなり難易度が上がります。
(仕事で予報業務・キャスター業務にかかわる方以外は、合格した瞬間がピーク、勉強する場も少なくモチベーションも保てない、という方がおそらく多いと思います。私もかつては、それで終わるはずの有資格者でした。)
前に書いたように、私も「清水の舞台から飛び降りる」くらいの決意で最初の講座の講師を引き受けました。
この一歩を踏み出すのは、2019年現在でも勇気がいることだし、環境が整わないと難しいことなんだな、とひしひしと感じます。
今回、予報士会北海道支部の一員として講演させていただき、改めて、これまでのラッキーの積み重ね、出会いの奇跡に感謝せざるを得ませんでした。
今の環境を作ってこられた先人の恩に報いるためにも(ちょっと目立ってしまった身としては)何らかの対外的な活動を「できる範囲で」今後も続けていき、今後、活躍される皆さんのためになりたいという希望は持っています。
小さなことでも、何か背中を押せるようなことがあれば、私からもバトンをつないていきたいです。
引き続き、蜃気楼の普及・研究活動や、予報士会活動への応援を、よろしくお願いいたします!
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