九州人の愛する不知火(不知火紀行・番外編)
長崎市内をネチネチと見て歩く全旅程を終え、もうあとは帰るだけ、という長崎空港。お土産も見終わって、出発の荷物検査用ゲートの前にそれはあった。
どこかの観光協会が、町の宣伝をしているブースで、職員の人が何名か長机に商品やパンフレットなどを並べて立っていた。
そのうちの一枚のチラシ。遠くから目ざとく見つけて猛進。
こ、これは・・・島原の不知火祭り???
宣伝ブースは島原市のものだった。
「島原でも、不知火が見えることになっているんですか?」
「いや、昔、有明海のことを、不知火海、って言ったんですよ。」
そ、そうなのかー。
八代海だけを指しているわけではないのか、不知火海って。。。。
確かに、内田康夫は、九州に存在する二つの「不知火町」という地名に、例の小説の着想を得た、とあとがきに書いていた。
私が訪れた、熊本県不知火町と、福岡県大牟田市中心部にある不知火町だ。
さらに長崎の島原にも不知火の地名があったとは。
あの辺の海域は、どこも内海で、穏やかな浅瀬が広がっているのだろうから、あちこちに不知火の伝説はあるのだろう。
帰ってきてから、有明海を昔不知火海、といったのかを軽く調べてみたけど見つけられなかった。
しまばら温泉不知火まつり
島原でも不知火まつりが。
さらに、ちょうど実習生で長崎出身の学生さんがいたので、不知火について聞いてみた。
不知火、という現象のことや名前自体は、かなり浸透しているが、
「不知火って蜃気楼っていう説があるんですか・・・」
と驚いており、やはり怪奇現象の類という認識だった。
不知火ではないけど、蜃気楼的な話としては、すごくおだやかで天気がいいとき、島原のあたりから対岸の熊本のあたりが、いつもよりハッキリ見える、っていう話はきいたことがあるって。
また、彼女の地元の近くにも、たしか不知火、という地名があったはず・・・・と仰るので検索すると、とりあえず諫早市に、不知火橋、という橋があることがわかった。
比較的、日本が寒冷化していた昔、九州のあちこちで、蜃気楼的現象が見られたから、たくさん知名が残っているのか?
はたまた、日本書記の言い伝えが強く印象に残り、九州各地に広がったのか?
どちらが先かはわからない。
科学的には蜃気楼、とするよりも、ちょっと不思議な印象を残した話、のほうが、人々の記憶に残りやすいことの証明になのかもしれない。
果たして北海道の「幻氷」は、この先100年、200年・・・1,000年と、人々の記憶に残り続けられるのか?
ここらでひとつ、SF的あるいはスピリチュアル的、一歩進んでオカルト的な逸話の何編かでも石碑に刻んで残しておくのが、論文を書くより効率的なのかも。・・・と誘惑にかられそうだ。
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